2/03/2012

円安へのきっかけ



円安に動くにしても、良いケースと悪いケースがあります。
良いケースで円安になるのは、日本や世界経済が好転し、日本や世界中の投資家が積極的にリスクを取るような環境になることではないでしょうか。一方、悪いケースで円安になるのは、日本の経常収支が黒字から赤字に転落することや、対外純資産が取り崩されること、そしてインフレが進むこと等が悪いケースに該当します。


現在の円を取り巻く環境について整理してみます。現在日本の経常収支は黒字ですが、減少傾向にあります。これが赤字に転じれば円安になる可能性があります。しかし問題は、250兆とも言われる対外純資産です。これほどの規模の対外純資産が一気に失われることは無いので、いくら経常収支が減少傾向にあっても、しばらくは円が強い状態が続くのではないかと考えられます。


とは言え、円安の方向に向かうことももちろん考えられます。例えば、日本の景気が回復方向に向かった場合、日本から海外に積極的な投資が行われるため、円売りが促されるということもあります。そうするとお、徐々に円安が進むこともあります。


その観点から見ると、現在のユーロ債務危機の問題が解決すれば、日本の景気も徐々に回復に向かい、海外への投資が積極的に行われるようになることも、充分に考えられます。したがって、ユーロ債務危機の問題の解決は、円安のきっかけになると、僕は考えています。


ただし、ここで一つ注意しておきたいことは、"米ドル/円"と"クロス円(米ドル以外の通貨と日本円のペア)"の動きが異なるということです。クロス円については、円安が進むと思いますが、米ドル/円については、むしろ円高になる可能性がまだあります。理由としては、米ドルが非常に弱い状態にあるからです。先日の【円高の原因】の記事中でも挙げましたが、米国は世界最大の経常赤字国で純債務国です。更にゼロ金利政策を続けていることもあり、この状況下で米ドルが対円で上昇する可能性は低いのではないでしょうか。ユーロ債務危機の問題が解決することで円が売られると思いますが、それ以上のペースで米ドルが売られることで、米ドル/円で見た場合、円は米ドルではほとんど売られないということも考えられます。


この米ドルが積極的に買われるようになるケースとしては、2つの条件のもとにありえます。ひとつは、米国の経常収支の赤字額が減少し、黒字転換の可能性が見えた場合。そしてもう一つは、米国の金利水準が上昇傾向になることです。しかし、一つ目の経常収支については可能性が低いと考えられます。2つ目の金利水準についても、景気が回復すれば上昇はするとの見方がありますが、需給ギャップがあまりにも広がっているためん、なかなか金利上昇には転じないのではないでしょうか。

※需給ギャップ
企業の生産設備や労働力、技術力をフル稼働した潜在的な実質国内総生産(GDP)似た意思、実際の需要を反映したGDPがどれだけ離れているかを示す指標。別名GDPギャップ。


そう考えると、米ドルが積極的に買われる要因がまだ見えてこないため、米ドルに対して円安が進むまでにはかなりの時間がかかると、僕は思います。






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